「武将はなぜ猪に乗る神様を兜の篭めたのか?」
「亥年はイノシシ年ではなくてブタ年!?」
~はじめに~
皆様明けましておめでとうございます。平成最後となります本年は亥年です。
亥年ではイノシシが当てられ親しまれていることから、亥年生まれの方は勇気があって物怖じしない、他人には言いにくいような事もハッキリ言う、全く根に持たないと言ったイノシシが突進するような性格を持った人が多いと言われます。
イノシシの性格は仏教にも影響を与えています。皆様は「摩(ま)利支天(りしてん)」という仏様をご存知でしょうか。摩利支天は日本ではイノシシに乗る仏様の姿で描かれ、武将たちに人気が出ました。摩利支天を好んだ武将には毛利元就(もうりもとなり)と楠(くすの)木(き)正成(まさしげ)が挙げられます。毛利元就は摩利支天を旗印として用い、楠木正成は兜の中に摩利支天の小像を篭(こ)めていました。
なぜ摩利支天が武将たちから人気が出たのでしょうか。猪の勇敢な性格も関係しますが、摩利支天が本来持っている性格も関係していると考えられます。それでは摩利支天について見てみましょう。
~摩利支天の性格と武将~
摩(ま)利支天(りしてん)のように「天」という字が最後に来るのは「天部(てんぶ)」に属する仏様です。天部は元々インド土着の神様で、後に仏教を護る守護神となりました。そのため、仏教を信仰する人々を護るのも天部の役割です。つまり、仏教の警備員さんという事になります。
警備員さんは護るのが仕事なので、敵にまけない強い力を表すため、多くの武器を持っていたり、鋭い顔をしているものが多くあります。
本来、仏教の敵は「煩悩(ぼんのう)」といって私たちの心に巣くう悪い欲のことを指します。煩悩は月にかかる雲のように、増えることですべての人々が持つ、正しい心(月)を隠してしまいます。すると正しい判断が出来なくなり、自分中心に物事を考えるようになってしまうのです。そのため、この煩悩の雲を払うことが仏教の目的となっています。
さて、戦国武将たちはこの天部の持つ主君を護る、敵を打ち倒す勇猛な姿を好みました。そのため、天部は摩利支天の他、四天王を中心に人気が出て旗印に使われることが多くなりました。しかし、楠木(くすのき)正成(まさしげ)が兜に摩利支天の小像を篭めていたのは、摩利支天特有の性格が関係しています。
先ほど述べたように天部の仏様は元々インドの神様でした。そのため、インドには摩利支天の説話が残っています。
摩利支天はインド語で「マーリーチー」と呼ばれています。マーリーチーは帝釈天と呼ばれる神様とアシュラと呼ばれる鬼が戦ったとき、帝釈天が所有する日と月をアシュラの攻撃から護った女神です。このときその姿は誰にも見えなかったとされます。
なぜマーリーチーの姿が見えないのでしょうか。実はマーリーチーは陽炎(ようえん)や光線を意味する、「マリーチ」からその名前がとられました。そのため、陽炎の仏様として信仰されるようになったのです。陽炎と言えば直射日光で熱せられた地面の上や,焚き火の上などを通して見たとき,物体が細かくゆれたり形がゆがんで見える現象を指します。つまり、マーリーチー(摩利支天)は陽炎なので捕まえることも見ることもできないのです。
のちにマーリーチーは中国に伝わり、漢字が当てられ摩利支天とされ日本に伝わりました。このとき陽炎は見えない事から、敵に見つからないという信仰が生まれ、武士または忍びと呼ばれる人々の間で好まれました。そのため、楠木正成の兜に摩利支天像が篭められるようになったと考えられています。戦の人気者となった中、摩利支天は女神としての姿から戦に突撃する男神の姿として描かれるようにもなったのです。
~猪と仏教~
それではなぜ摩利支天はイノシシに乗っているのでしょうか。今日では太陽光線のように突撃するさまをイノシシが表していると言われますが、実は正確な答えはわかっていません。むしろ本来はイノシシでなくブタに乗っていると考えられています。
中国で「猪」の漢字はブタを指しますが日本ではイノシシです。そのため、中国でイノシシは野猪と表します。中国から干支に当てた動物が日本に伝わったとき、これらの漢字の読みの違いから日本では本年をイノシシの年と当てられました。つまり、中国ではブタ年という事になります。
皆様もご存知の『西遊記(さいゆうき)』において「猪八戒(ちょはっかい)」と呼ばれる豚人が登場します。彼は本来修行によって天上界に昇り天(てん)蓬(ぽう)元帥(げんすい)として水軍を率いる摩利支天の部下として活躍していました。しかし、酒に酔った勢いで女神にしつこく戯れ、セクハラの罪で天上界を追われ、ブタの胎内に宿って豚人の姿になりました。余談ですが仲間の孫悟空(サル)が河に入れないので代わりに入って敵と戦うお話が見られます。これはブタが泳ぎを得意とする(また、天蓬元帥が水軍の将であった)ことから表されたものです。
さて、このことから摩利支天が乗るのはイノシシではなくブタであったと考えられます。そして、日本人による猪の漢字の読み違いによってその姿に違いが出るようになりました。
摩利支天がなぜブタに乗っているのか、正確な答えは未だ見つかっていません。しかし、ブタが家畜として人々の生活を支えていたことで、崇(あが)める対象となったと考えられます。日本語の「シシ」は食肉を指す言葉です。ゆえにイノシシは「イ」という食肉となります(鹿肉はカノシシ)。そのため、ブタもイノシシも人間の命を支える大切な存在だったのではないでしょうか。
今年の干支は亥(猪)です。この機会に一度、食べることへの感謝の気持ちを確認してみてはどうでしょうか。そのために昔の人々は神仏と共に動物を一緒に崇めたのではないでしょうか。
「亥年はイノシシ年ではなくてブタ年!?」
~はじめに~
皆様明けましておめでとうございます。平成最後となります本年は亥年です。
亥年ではイノシシが当てられ親しまれていることから、亥年生まれの方は勇気があって物怖じしない、他人には言いにくいような事もハッキリ言う、全く根に持たないと言ったイノシシが突進するような性格を持った人が多いと言われます。
イノシシの性格は仏教にも影響を与えています。皆様は「摩(ま)利支天(りしてん)」という仏様をご存知でしょうか。摩利支天は日本ではイノシシに乗る仏様の姿で描かれ、武将たちに人気が出ました。摩利支天を好んだ武将には毛利元就(もうりもとなり)と楠(くすの)木(き)正成(まさしげ)が挙げられます。毛利元就は摩利支天を旗印として用い、楠木正成は兜の中に摩利支天の小像を篭(こ)めていました。
なぜ摩利支天が武将たちから人気が出たのでしょうか。猪の勇敢な性格も関係しますが、摩利支天が本来持っている性格も関係していると考えられます。それでは摩利支天について見てみましょう。
~摩利支天の性格と武将~
摩(ま)利支天(りしてん)のように「天」という字が最後に来るのは「天部(てんぶ)」に属する仏様です。天部は元々インド土着の神様で、後に仏教を護る守護神となりました。そのため、仏教を信仰する人々を護るのも天部の役割です。つまり、仏教の警備員さんという事になります。
警備員さんは護るのが仕事なので、敵にまけない強い力を表すため、多くの武器を持っていたり、鋭い顔をしているものが多くあります。
本来、仏教の敵は「煩悩(ぼんのう)」といって私たちの心に巣くう悪い欲のことを指します。煩悩は月にかかる雲のように、増えることですべての人々が持つ、正しい心(月)を隠してしまいます。すると正しい判断が出来なくなり、自分中心に物事を考えるようになってしまうのです。そのため、この煩悩の雲を払うことが仏教の目的となっています。
さて、戦国武将たちはこの天部の持つ主君を護る、敵を打ち倒す勇猛な姿を好みました。そのため、天部は摩利支天の他、四天王を中心に人気が出て旗印に使われることが多くなりました。しかし、楠木(くすのき)正成(まさしげ)が兜に摩利支天の小像を篭めていたのは、摩利支天特有の性格が関係しています。
先ほど述べたように天部の仏様は元々インドの神様でした。そのため、インドには摩利支天の説話が残っています。
摩利支天はインド語で「マーリーチー」と呼ばれています。マーリーチーは帝釈天と呼ばれる神様とアシュラと呼ばれる鬼が戦ったとき、帝釈天が所有する日と月をアシュラの攻撃から護った女神です。このときその姿は誰にも見えなかったとされます。
なぜマーリーチーの姿が見えないのでしょうか。実はマーリーチーは陽炎(ようえん)や光線を意味する、「マリーチ」からその名前がとられました。そのため、陽炎の仏様として信仰されるようになったのです。陽炎と言えば直射日光で熱せられた地面の上や,焚き火の上などを通して見たとき,物体が細かくゆれたり形がゆがんで見える現象を指します。つまり、マーリーチー(摩利支天)は陽炎なので捕まえることも見ることもできないのです。
のちにマーリーチーは中国に伝わり、漢字が当てられ摩利支天とされ日本に伝わりました。このとき陽炎は見えない事から、敵に見つからないという信仰が生まれ、武士または忍びと呼ばれる人々の間で好まれました。そのため、楠木正成の兜に摩利支天像が篭められるようになったと考えられています。戦の人気者となった中、摩利支天は女神としての姿から戦に突撃する男神の姿として描かれるようにもなったのです。
~猪と仏教~
それではなぜ摩利支天はイノシシに乗っているのでしょうか。今日では太陽光線のように突撃するさまをイノシシが表していると言われますが、実は正確な答えはわかっていません。むしろ本来はイノシシでなくブタに乗っていると考えられています。
中国で「猪」の漢字はブタを指しますが日本ではイノシシです。そのため、中国でイノシシは野猪と表します。中国から干支に当てた動物が日本に伝わったとき、これらの漢字の読みの違いから日本では本年をイノシシの年と当てられました。つまり、中国ではブタ年という事になります。
皆様もご存知の『西遊記(さいゆうき)』において「猪八戒(ちょはっかい)」と呼ばれる豚人が登場します。彼は本来修行によって天上界に昇り天(てん)蓬(ぽう)元帥(げんすい)として水軍を率いる摩利支天の部下として活躍していました。しかし、酒に酔った勢いで女神にしつこく戯れ、セクハラの罪で天上界を追われ、ブタの胎内に宿って豚人の姿になりました。余談ですが仲間の孫悟空(サル)が河に入れないので代わりに入って敵と戦うお話が見られます。これはブタが泳ぎを得意とする(また、天蓬元帥が水軍の将であった)ことから表されたものです。
さて、このことから摩利支天が乗るのはイノシシではなくブタであったと考えられます。そして、日本人による猪の漢字の読み違いによってその姿に違いが出るようになりました。
摩利支天がなぜブタに乗っているのか、正確な答えは未だ見つかっていません。しかし、ブタが家畜として人々の生活を支えていたことで、崇(あが)める対象となったと考えられます。日本語の「シシ」は食肉を指す言葉です。ゆえにイノシシは「イ」という食肉となります(鹿肉はカノシシ)。そのため、ブタもイノシシも人間の命を支える大切な存在だったのではないでしょうか。
今年の干支は亥(猪)です。この機会に一度、食べることへの感謝の気持ちを確認してみてはどうでしょうか。そのために昔の人々は神仏と共に動物を一緒に崇めたのではないでしょうか。





