No.3 六波羅蜜(平成28年10月号)

人として正しい生き方とは?
古代より伝わるお坊さんたちの生き方

はじめに

お彼岸になると多くの方がお墓参りに行きますが、その理由をご存知でしょうか。ここではお彼岸に供養をする理由と、お彼岸と深い関係にある「六波羅蜜(ろくはらみつ)」について説明します。

行事としてのお彼岸

 行事としての用来は諸説ありますが、お彼岸の中日、春分、秋分には、太陽が真東から昇り、真西に沈みます。沈む太陽を拝む「日(ひ)願(がん)」と彼岸(ひがん)(仏様の世界)を重ねて、ご先祖様といずれ来る自分の旅先が仏様のもとであることを願ったのが始まりとされています。
お彼岸の言葉の意味

 敬称をつけてお彼岸と呼びますが、仏教用語の「彼岸」がもととなっています。彼岸は仏様の世界を指す言葉で、対義語として「此(し)岸(がん)」という言葉があります。此岸は、衆生(仏様でない者)の世界のことを指します。
 古代インドのお坊さんたちは、此岸(衆生の世界)から彼岸(仏様の世界)に至るための修行をしました。この修行を六波羅蜜と呼びます。

彼岸に至るための六つの修行

六波羅蜜の修行は
1 布施(ふせ)…何かを施す(与える)こと
2 持戒(じかい)…戒律(ルール)を守ること
3 忍辱(にんにく)…耐え忍ぶこと
4 精進(しょうじん)…努力すること
5 禅定(ぜんじょう)…落ち着いて考えること
6 智慧(ちえ)…正しい見方

の六つです。
 布施は物だけでなく、笑顔など形のないものでも構いません。相手が喜んでくれるだろうと思うことを考えて実践する修行です。欲張る心、つまり貪りの心の解毒剤となります。
 持戒は交通ルールなど、身の回りにあるルールを守ることです。ただ守るだけでなく、一日三十分の散歩など自分ルールを作ることも大切です。持戒は他人を思いやる心を育てる修行です。
 忍辱はただ耐え忍ぶだけでなく、自身の弱さ(弱点)と向き合う時間です。誰にでも苦手なことがあります。自分の苦手を認めることが大切なのです。忍辱は自身の成長への一歩です。
 精進は忍辱で見つけた弱点を成長させることです。失敗を恐れず努力すれば、自然と力が付きます。また、その姿は周りの人にとっても尊敬に値する姿となります。精進は自身だけでなく、環境にも影響を与える修行です。
 禅定は一度立ち止まり、今までの行いを見直すことです。「自分の努力は正しいのか?」「物を与えず、もらってばかりではないだろうか?」など自分の行いを見直して全ての修行をより良いものとします。禅定は過去を振り返り、昔の自分を知る時間です。
 最後の智慧は、自分自身を知ることです。六波羅蜜の修行を行うことで、過去の自分は成長した姿となります。大きな進歩がなくとも、小さな一歩が大きな一歩につながることを信じて、仏様のような心に近づくことが大切です。

修業とは自分を知ること

 お坊さんたちは自分を知ることが、彼岸(仏様の世界)に至る鍵であることに気が付きました。この修行が日本に伝わり、今日の彼岸の行事の一部になりました。そのため、お彼岸の時期は、御先祖様の冥福を祈るだけでなく、自分を見つめ直す行事でもあるのです。